3/23

 

大学の部活動の一つ下の後輩と一つ上の先輩が、私の住む愛知県の片田舎に遊びにきた。

この小さな町には私鉄と国鉄の両方の駅があり、彼らは「安いから」と言って二人とも国鉄で来た。私鉄側の駅の方が私の家に近いため、迎えに行くのが少し面倒だと思った。

 

車は母が仕事で使っていたため、私は歩きで彼らを迎えに行った。ほとんど行かない国鉄の駅までの道は、21年過ごしたこの小さな町でも初めて通るような道ばかりだった。駅までに4つもの理容室があり、そのうち3つは閉まっていたが、1つの店内では老夫婦が真剣にテレビをみていた。

私はBUMP OF CHICKENの「R.I.P.」を聴いていて、自分の小さな頃を曲と重ねていたが、私の思い出は私だけの思い出として大切にしたくなったため、ヘッドフォンを外した。家を出た頃から曇っていたが、2人と会った頃には雨と風が強くなっていた。

 

初めに、最近できた道の駅に行った。

そこのフードコートでは、海鮮丼や、鉄火巻、天むすが看板メニューとして掲げられており、私たちはそれを注文したが、「ご飯がない」「魚が売り切れている」他の理由でどれも食べられなかった。仕方なくサービスエリアのフードコートにあるようなラーメンやかき揚げそばを食べた。

意外と美味しかったが、後輩は「この町にはやる気が感じられない」と不満げだった。

雨が落ち着くまで待とうという話だったが、一向に止む気配がないので、仕方なく店を出て、町の商店街へと向かった。

 

商店街は店と店の隙間が多く、実質5つほどの店しかやっていない。初めに寄った楽器店では、彼らは記念にピックを買っていた。ほとんど客の来ない店であるため、店主の老婦人は不思議そうに私たちを眺めていた。

次に、私がたまにいく喫茶店に行った。

そこでは先輩が少し前に国鉄で熊本に向かった話を聞いた。宿泊は全て漫画喫茶で過ごし、寒くなれば古着屋で服を買い足し、それが荷物だと感じれば近くの郵便局で自宅宛に送るなど、私なら思いつかないことをたくさんしていてすごいと思った。道中で読んだ赤毛のアンが面白かったらしく、私も読んでみようと思った。

後輩もよくゲストハウスなどに泊まって日本を旅するような人であり、山口県での話をきいて、楽しそうだと感じた。私も就職活動に区切りが付いたら旅に挑戦したい。

 

その後は私の母校の小中学校を巡った。

自分の子供時代を語っていくなかで、些細な思い出たちをしっかり大切にできていることに安心した。人に話すことで思い出は膨らんでいくものだと思う。今日のこともいつか誰かに話したい。今日のことを彼らがいつか誰かに話してくれることを願っている。